まどゆきのホームページ

父が亡くなって六年目です。
あれから毎年、この夏はこせないかもしれない、この冬は越せないかもしれない・・と、言いながらまた何度目かの夏を迎えました。
そして今は、９１歳です。
私にとってはこの母が生きていてくれることが心の励みです。
私に似て？どこか鷹揚で楽天的な母のことを書きたくなりました。

9月3日　晴れ　暑い
実家に行くと、母が「今日は不思議なことがあったのよ」と言うことで・・
じっくり話しを聞いてみると・・
洗濯をして洗濯物を干そうと思ってまずは竿をきれいにするために雑巾を持って庭におりようとしたらしいのです。
縁側から庭におりるのに、石段がひとつあるのですが・・それに片足をかけたときにすべってしまい、横の月下美人の鉢の上に尻餅をついたのだそーです。すりむいたみたいで足が痛かったのでマーキュロをつけようと思ったけど、先に竿を雑巾で拭いてそれから家に入り薬を出してつけようと思ったら、傷がみあたらなかったそうです。で、確かに痛かったんだからと、足をあちこちさわってみたらしいのですが、どっこもなんともなくて赤くもなってなかったんだそうです。
母はそれで「不思議だ不思議だ」と言っているのですが・・
私は内心びっくりしました。何事もなかったからよかったようなものの・・そのままそこで転んで立てなくなってたりしたらおおごとです。
「お母さんっ　外に出る時はまず縁側に座ってちゃんと両足スリッパを履いてそれからゆっくり立っておりなきゃだめよ。」と、母の言う不思議さにはとりあわず、思わず強い口調で言ってしまいました。
そろそろ　母の一人暮らし・・考えなきゃいけない時期かな・・と思いました。

9月6日　晴れ
今日、実家の門の鍵を開けようとしたら、らんちゃんの鼻が扉の下から出てました。
おお、さすがにこの暑さでも外に出て遊ぶとは元気がいい・・と思いながら門のとびらを開けたら、なんと母がいるんです。まだ四時前で、一番暑い時間帯です。「どうしたん？」と母に聞くと、「らんちゃんが呼びにきたのよ。一度は無視したんだけど・・何度も呼びに来るから出てきたとこなのよ」ということ。
「お母さんっ　こんなに暑い時間帯に、なにもらんちゃんの言うこときかなくてもいいのよ・・熱中症とかになったらどうするのよ」私はどっちが主人かわかんない母とらんちゃんを叱りました。
いつも、母には、母が主人なんだかららんちゃんが母の言うことを聞くようにさせなきゃだめよ・・と口をすっぱくして言うのですが・・どーも母はらんちゃんの言うなり・・みたいです。
父の死後、落ち込んでみるみる弱っていった母にらんちゃんを買ってきてあげたら、初めは「私には育てられないかもしれない」と不安げだった母が、再び明るく元気になったので、らんちゃんのおかげだと思ってるから、まあ、母の好きなようにらんちゃんを育てればいいとは思うけど・・母が無理するようでは、私の方が心配で・・でも、母にしてみれば、らんちゃんとの関係はしごくうまくいってると思ってるようです。

9月7日　晴れ
昨日も今日もダイエー負けて・・母は少々カリカリしてます。
ダイエーには中継ぎとかおさえのピッチャーがあんまりいない・・とか、カブレラにホームラン打たれて、あんな高めの打ってくださいみたいなボールはなげちゃだめよ・・とか・・わたしでもコメントできないような専門的な事を言うんです・・。今日の松阪はいつもよりボールがいい・・とか・・
で、また大相撲もはじまって・・しばらく母はテレビに釘づけかもしれません。
前から源氏物語とか古典文学が好きなのは知ってたけど・・父がなくなってこんなにスポーツ好きになるとは思いませんでした。

9月8日晴れ
今日は亡き父の誕生日です。
母は父にしゅんめい菊の花とプリンをあげて仏前で手を合わせてました。
で、「私の誕生日には、チョコレートをお願いね」・・と私に言います。からだによくないからあまり食べないように医者に言われてるらしいのですが・・ホントはチョコが大好きなんです。
だから実家にはいつもチョコがあるのですが・・「今日は魁皇が勝ったから」とかちょっと理由をつけては少しだけ食べてるみたいです。こういうとこ・・私によく似てます・・って　私が母に似てるのかな？

９月２１日晴れ涼しい　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

母とらんちゃんのこの幸せそうなことっ(^.^)

９月２３日晴れ　涼しい

９月２９日晴れ　
二日ほど留守をして、今日、京都の千枚漬けとゆずの香りのするお漬物・・それに博多駅で買った駅弁を持って博多駅から実家に直行しました。
母は昔、長年京都に住んでいたので・・お漬物をたいそう喜んでくれました。多すぎるようだったら、姉に少しわけてあげたらいいね・・って言ったら・・あげなきゃいけない？って聞くから・・「お母さんが食べれるなら、なにもあげなくてもいいよ」と言ったら・・「お姉さんが来てほしいと言ったらわければいいね」と、自分なりに納得してました。
おこわの駅弁も思いの他喜んでくれて・・「私は駅弁は大好きなのよ、旅行に行ったら必ず買って食べたし、家にも持って帰ってたのよ」と言う。私が子供の頃はそんな記憶はないのですが・・子供達が育ちあがって父とあちこち旅行するようになった頃から、そうするようになってたのかもしれません。
母を喜ばせようと思うと大変ですが・・でも、思わぬところでこんなに喜んでくれると・・私までうれしくなりました。

９月３０日晴れ　今日も涼しい秋晴(^.^)
最近はしのぎやすく良い天気が続くので食欲も進むらしい・・
体重がもとに戻ったと喜んでましたが・・たぶんそれでも４０キロはないでしょう・・。
今日、実家に行ったら、らんちゃんのお迎えがないので、「らんちゃんは美容院？」と聞くと「え？そういえば静かだわね・・・あっ　さっき仏間に行ってふすま閉めたから・・閉じ込められてるのかな？」と言いながら仏間に行ったら・・やはり閉じ込められてました。「日頃は吠えまくるのになんで閉じ込められた時に吠えて知らせないの？」と母はらんちゃんに言ってましたが・・そういえばうちのひめちゃんもそーだったなー・・と・・思い出してしまいました。母はらんちゃんの方がクチャやひめちゃんよりおりこうだと言ってますが・・私からすれば・・似たようなもんです(^.^)

10月2日　晴れ
母は京都のおつけものと駅弁がよほどうれしかったらしく、今日もまたお礼を言われた。
アメリカ土産は、姉とお金を出し合ってビーバーの毛でできたショールを買って来たのだけど・・
そのときもうれしそうではあったのだけど・・「あったかそうね、ありがとう」と、言われただけだったのに・・
今回は、おつけものなのに・・うれしそうにわざわざタッパーに入れたのを出してきて・・「おいしいよ、あなたもちょっと食べてみる？」・・てな感じ・・まあ・・めでたしめでたし・・かな？

10月3日　晴れ　
今日は、仕事関係の会議が街中であり・・久々に街へ出かけました。
会議が終わって、ちょっと街中を歩いていたらホークス優勝記念の福袋を売ってました。
電器屋さんのだったけど・・私は福袋を買うのが好きなので・・思わず買ってしまい・・それを持って実家に行きました。母も結構好きで・・一緒に開いたら、ドライヤーと漢字辞書と、ホークスマークの携帯ラジオと、ビデオテープが６個はいってたんです。
母は「漢字辞書がほしい」と、言うんです。最近、手紙を書くときに字を忘れて困ってたのよ・・と・・
じつは私もこの中身のなかでは漢字辞書が一番気にいったのですが・・母に先をこされてしまいました。
仕方がないから母にあげて、使い方を教えました。
普段、機械はだめ、携帯なんかもってのほか・・と言ってたのですが・・この漢字辞書はよっぽどほしかったらしく、熱心に使い方を聞き、すぐに覚えました。
こんなによろこんでくれるなら・・本望です。

10月4日　晴れ　肌寒い　晴れ
やっと旅行の写真が出来上がって母に見せました。
一枚一枚、これはどこ？これは何？と、丁寧に、見てくれました。眼鏡をかけて、さらに大きな虫眼鏡を持って・・
で、私は旅行記のようなことをいろいろ説明して・・母は「私も行った気分になれた」と言ってくれました。
そして、両親を連れて行ったシンガポールやフィジーの話題に花が咲きました。
あの時は私が連れてったはずなのに・・私が熱を出して、すっかり両親の世話になってしまいました。
もうあの時でも母はたしか70ぐらいだったはず・・・元気でした。

10月５日　晴れ時々曇り
ＮHKでクイズ番組をやってました。
母と一緒にみてて答えが出る前にお互いで言い合ったのですが・・
母も私も二問正解でした・・東京オリンピックの頃のクイズでしたから・・わかったのかもー謎。

10月7日　晴れ
実家に行くと居間に座る間もなく母が「ねえ、ペンより弱いものってなにー？」と私に聞く。
「えー？　なんのこと？」と、テーブルを見ると新聞が開いてある・・。例のクロスワードクイズなのだ。
「んーー・・んーーー」と考えたすえ出た答えは・・「ケンじゃない？・・ペンは剣より強し・・って言うじゃん」
母は、「なーるほど・・」と、少し私のことを見直したように答え、それを新聞紙に書き込んでました。
「で、サーキットでスピードが出過ぎないように造るものはなに？」「えーーーっ　カーブじゃないのー？」
「それが四文字なのよ・・○け○ん・・になるはずなんだけど・・」
・・・・・(ｰoｰ)y~~~ ﾊﾟｧｰ　そんなの知らない・・誰かご存知ないですかー？
ホントにクイズ好きな母です・・。

10月8日　水　晴れ　
今日は陶芸教室で花瓶が出来上がりました。
それを持って実家に行き、母に「これにお花を生けてくれない？それを写真に撮ってHPに載せるから・・」と言うと「いいわよ・・これ、なかなかよく出来てるじゃない・・」と乗り気・・
そのうち、その写真をアップできるかもしれません・・

10月11日　土　晴れ　暑い
母が言うには・・二日前、いつも来てくれるヘルパーさんが用事で来れないからと、代わりの人を決めてくれたんだそうです。そしたら公社？の方から電話があってペルパーさんがお休みの時はこちらから代わりの人を派遣します・・と言うことらしいのです。今のヘルパーさんがもう決めてくれてます。と言ったらそれは困ると・・母にしてみれば、いつも来てくれるヘルパーさんに慣れてるから・・そのヘルパーさんの言うとおりにしたかったみたいなのですが・・どーも話しがうまくいかなくて・・ヘルパーさん代理も来て、公社の方からも代わりの人が来た・・と言うことなんです。まあ・・午前と午後にわかれてたから、衝突はなかったけど・・なんか困ったらしい・・そりゃそうですよね・・母の都合にあわせてくれるべきではないかな・・って思いましたが・・お役所は・・なかなか融通はきかないんでしょうねぇぇ

１0月１３日　月　曇りのち雨
昨日はお客があったので、実家には行かなかったのですが・・
今日、行くと、実家の手前の曲がり角から金木犀の甘いステキな香りが・・
おおお・・いよいよ秋もたけなわ・・だな・・って感じでした。
家に入ると、家の中でも金木犀のかおりが・・
「お父さんは金木犀の香りが好きだったから・・仏間に生けたのよ」と、母。
そういえば母は、仏間の花を絶やしたことがないなぁ・・

１0月１５日　水　秋晴れ
実家に行くと、母は一通の手紙の前で、思い悩んでいた。
３年ぐらい前に６０年ぶりで会ったいとこが夫婦で東京から来る予定らしい・・とのこと。
母は、明治の人間のせいか、いくら気を使わなくてもいいと言われてもそうはいかない。
最近は目も耳も悪くなってきたのを自覚してるし、さらにだいぶ疲れやすくなってて、気を使わねばならない来客はどうしても来て欲しくないらしい。
最初は、山口で親戚がいろいろ集まるから来ないか？と言う手紙がきて、とても行けないと返事を出したところ、それでは自分達夫婦が予定をくりあげて一日早く出発して福岡まで会いに行く・・と言うことらしい。
お弁当でいいし、何も気をつかわなくていい・・と言うことらしいが、母にしてみればそうはいかない。
相手は好意で気を使ってくれて、わざわざ福岡まで来てくれるのに・・なんて言って断ればいいだろう・・
というのが母の悩み。
仕方がないので娘の私から断りの手紙を書くことに・・・・あ～あ、何て書いたらよいものやら・・
頭が痛い・・・

10月１７日　金　秋晴
パソで結構いろいろ文面考えてやっと書き上げて持っていったら・・なんと母は自分で書いてみたけどどうかしら・・と言う。どれどれ・・と読んでみると・・これがいい出来栄え・・。
「これでいいじゃない・・私が書いてくる必要全然なかったねー」と言うと「ほんとにこれでいい？文章ヘンじゃない？」と心配顔。晩年父がボケだしたころ・・父が「おれはヘンじゃないか？」とよく聞くようになり・・そのつど「大丈夫よ、ちょっと忘れっぽくなっただけよ」と言ってたから・・母も、自分がぼけても誰も言ってくれないと思って、心配しているのです。そこまで気がまわるようなら・・まだまだ大丈夫。

１0月１８日　土　秋晴
手紙を出してすこし落ち着いた気持ちになったのか・・今日行くと、ゴルフを見てました。
「わかるの？ゴルフ」「この前あなたに教えてもらったじゃない・・わかるわよ」とのこと。
教えた私が教えたことを忘れてしまってる・・・やばいのは私のほうかも。

10月１９日　日　秋晴れ
母曰く・・「阪神て弱いのねー　こんなに弱いとは知らなかった・・ってことは、セリーグって・・えらく弱いチームばっかなのね」・・だそーです。

10月３０日　木　秋晴
すっかりさぼってしまいました。
この間、とりあえずほとんど毎日母のところに顔は出していたのですが、なにしろ近年にない忙しさで、居ても１０分とか５分で、ほんとに母の顔を見に行ってた・・って感じなのです。
先日の日曜日に父の七回忌の法要があったのですが・・
行った時は、母はちゃんとお化粧して気丈にお客様の接待をしていたのですが、親戚のみなさんに「おばさまはちっともお変わりなくてお元気そうでなによりですね」と言われるたびに、「そんなことありませんよ」と顔を曇らせる。
どういうわけか母は、元気に見られるのがいやみたいなのです。
そして、法要が終わって食事に行く・・というところで、「めまいがするから行くのをよそうかしら・・」と言うのです。「今日来た人たちはみんなお母さんとお話しするのを楽しみに見えてるんだから・・がんばって行ってくれない？」そういって・・母に行くことを納得させたのですが・・
母は、元気だと褒めてもらうより、大丈夫？と、心配してくれるほうがうれしいみたいです。
私は食事の途中抜け出して、仕事だったのですが、その後も母はなにごともなく無事食事会を終えたようです。