父が亡くなって六年目です。
あれから毎年、この夏はこせないかもしれない、この冬は越せないかもしれない・・と、言いながらまた何度目かの夏を迎えました。
そして今は、９１歳です。
私にとってはこの母が生きていてくれることが心の励みです。
私に似て？どこか鷹揚で楽天的な母のことを書きたくなりました。
２００３年７月１日
いつものように実家に行くといつになく母が楽しそうに話しかけてきました。
「今日ねぇ、すごいことがあったのよ」って、私が「どうしたの？何があったの？」って聞くと、話してくれたのが次のとおりです。
いつものように新聞を読んでいたら、ランちゃんが横に来て「ワンワン」と呼んだんだそうです。
遊んでほしいのだろうと思って新聞読んでからね・・って言っても、いつもならしばらくがまんするのに今日はほんとに話しかけるようにまた「ワンワン」言ったそうで、で、どうしたの？って聞いたら、さっと走って隣の部屋に行き、また戻ってきて「ワンワン」と話しかけるんだそうです。
で、母は仕方なく立ち上がって隣の部屋に行ったら、なんとごきぶりがいたそうなんです。
で、母はあわてて殺虫剤を持ってふきかけたのですが、そこはごきぶり、さっと逃げちゃったんです。
そしたらランちゃんがさっとタンスの反対側に行って「ここだよ」って教えてくれたらしいんです。
で、無事ごきぶりをやっつけることができたそうです。
その話しを自慢そうに話す母をみてうれしかったし、母とランちゃんの二人三脚の奮闘ぶりを想像すると思わず楽しくなりました。
７月５日
麻雀をしたため、実家に行くのが少し遅くなりました。
九時過ぎ頃に行くと、母はプロ野球をみてました。
「どっちが勝ってるの？」って聞くと、「あ、見てなかったから・・どっちだろーね」と言う返事。
父は野球嫌いだったので、父の生きてる頃は野球を見たこともなかったのですが・・私がダイエーダイエーと騒ぐもので野球を見るようになったのが、最近では野球のことがよくわかるようになりました。
そして結構楽しんで見てるみたいなのですが・・野球はダイエーって私が言ったせいか・・巨人戦はあんまり興味がないようです。
７月６日
私が行くと、母は、写真の整理をしていました。
その中に何ヶ月か前に母と二人で泊まったホテルシーホークの写真がありました。
海と福岡市内が一望できて、なかなか良いホテルです。
母は温泉があまり好きではなく、どこかに行こうと言っても、ランちゃんあずけて行く気にはなれないみたいで、なかなか首を立てにふらないのですが、どういうわけかこのホテルシーホークだけは「行く」と言うのです。
市内だということもあるし・・なにかあったらすぐ帰れるし、それでいて気分転換になるのかもしれません。
また涼しくなったら行こうか？と聞くと、うん、と、うなずきます。
私としては、たまには違うとこに連れて行きたいのですが、まあ母が行きたいところが一番かも・・と思ってます。
７月７日
今日はどしゃぶりのせいか、七夕の話題はでませんでした。
母は、いつの頃からか、毎日日記をつけるようになりました。
日記と言っても、その日に何を買ったとか、誰が来た、とか何を食べたか・・とか、メモみたいなものですが、それでも大学ノートが何冊にもなっています。
そして暇なときには時々それを読み直したりしてるようです。
だから、、か、どーかわかりませんが、母は、私よりずーーっと記憶力がよくて・・。
母に「あなたしっかりしなさいよ」と言われてしまってる始末です。
７月８日
私は実家に行くと、父の席に座らされます。
そして、お菓子食べる？アイスクリーム食べる？プリン食べる？スイカ食べる？・・と、矢継ぎ早に聞きます。毎日そうなのです。
前は、「今日はおなかいっぱいだから、なにもいらないよ」と言うこともあったのですが、いくらそう言っても、母は立ち上がって冷蔵庫からケーキとか持って来るのです。で、おなかいっぱいだから何もいらない、ともう一度言うのですが、そしたら今度はちがうお菓子を持ってくるのです。そうやっていろんなものをテーブルに並べて、「どれか食べなさいよ」と言ってきかないのです。
それで最近は、何か一つ食べるように心がけているのですが、どれか一つ食べると、今度は「これも食べない？」と又持ってくるのです。
きっと私は父のかわりみたいなもので、めんどうみなきゃ気がすまないという母の習慣は、父が亡くなってもなくならないようです。
7月９日
母は、８８歳の時にベッドから降りる時に尻餅をついて背中の骨を骨折して、入院したことがありました。
その時、まわりの人はこのまま寝たきりになりボケてしまうのでは・・と心配しました。
私はそんなことにさせてたまるか・・と、毎日病院で、痛くない程度に腕と足の運動をさせました。
そして、クロスワードパズルの雑誌を母に持って行き、毎日１ページづつでいいからやってみて・・と渡しました。母は、さすが私の母親・・と言うか、結構クイズが好きみたいで、はまった感じで毎日お見舞いに行くとそれをやってました。そのおかげかどうか・・母は三ヶ月入院して元気になりボケることなく歩けるようになって退院したのです。
それ以来、週に一度新聞に出てるクロスワードパズルを解くのが大好きになり、私が行くと、どーしてもわからないところを私に聞くのです。しかし・・母にわからないことは・・私にもわからないことが多くて、二人で一緒に頭を悩ませ、辞書を持ってきて調べたりして一週間かけてやっと解けたりします。
一番困るのは最近の芸能人、スポーツ関係・・頭の悩ませようがないのです。全く知らない人名はわかりようがありません・・
時々、母が私が来る前に全部解いてることがあります。
その時のうれしそうで自慢げな母の顔をみると・・とっても可愛い母です
７月１０日
今日は、昼はピアノのレッスン、夕方からは本職のレッスンがあるので実家に行けません。
それでさきほど電話をしたら今日は先日の台風で壊れたトイの修理に職人さんが来ているとのこと。
私が一緒にいるとなんでも私に頼らねば出来ないようなことを言うのですが、自分ひとりのときは、結構なんでもシャキシャキとやってるようです。
今から職人さんにお茶をだすから・・と言ってそそくさと電話を切られてしまいました。
７月１１日（金）曇り後大雨
妹の息子のところに双子が誕生しました。しかも男の子と女の子の・・
私が実家に行ったら、その件で電話で妹と長話の最中でした。
ソファーに寝そべって、目を閉じて話しに夢中です。
私を歓迎してくれたのはらんちゃんだけ・・・いつになく大歓迎してくれました。で、らんちゃんと遊びながら待ってたのですが・・
ようやく長電話が終わって、「どうしたの？」って聞いたら、「信夫のところ、男の子と女の子だったんだって」
「それで？」「それだけよ」って・・・んじゃ何をあんなに長話してたんだろ・・・
７月１２日（土）曇りと雨
発表会の練習が終わってから実家に行ったので、夕方７時過ぎ頃着いた。
母の第一声が「もう麻雀してきたの？」思わずむっときて「今まで稽古だよ」と言ったら・・
「めずらしいこともあるんだねー」ですって・・。さすが親・・と言うべきか・・
私が作った器にお菓子を入れて出してくれた母も・・さすが親・・かな。
長年使っている食器がたくさんあるのに、母は私が作った器で自分の食事も食べてくれるんです。
７月１３日（日）今日も雨・・しかもどしゃぶり
昼ごろ、母から電話がかかってきました。
今日は大阪から男性ゲストが来てて、生徒と総げい古の日でてんてこまいしてたのですが・・
「今日、お謡いの会に行くのよ。おねえさん（私の姉）が連れてってくれるから。それで頼みがあるんだけど」「なあに？頼みって」「今日雨が降ってて雷が鳴りそうでしょ。らんちゃんは雷が大嫌いで一人にしておくのが可哀想なのよ。家に来てらんちゃんと一緒に留守番しててくれない？」「あのねぇ　今日は発表会の稽古がずーっとあって、７時ぐらいまでかかるのよ・・その後しか行けないよー」「えー　なんで日曜日も稽古するのよー。あなたずーっといなきゃいけないの？抜け出せないの？」「今日はゲストの先生もみえてるから抜け出せないよ」「まあ・・らんちゃんがかわいそうだわ。・・・・・・（間）・・・・じゃあ私が早めに帰ってくるからいいわ」
今では、どーも　実の娘よりらんちゃん・・・らしいです。
７月１４日(月)びっくりするぐらい涼しい
今日も夕方頃、実家に行きました。ちょうど相撲の中継が終わって食事をしてるところでした。
「今日の相撲はどーだった？」と聞いたら・・「うん、昨日は疲れたよー　四時間も座席に座りっぱなしで・・途中でらんちゃんのこと心配になったけど・・席が前から三番目でまわりが知ってる人ばっかりだったから抜けだせなかった」仕方なく「そうだったのー　でも、昨日は雨は降ったけど、雷は鳴らなかったから、らんちゃん大丈夫だったでしょ？」「そうね・・帰ってきたら大歓迎してくれたしね」「そかそか、よかったねー」
どうも、最近少し耳が遠くなったようで・・テレビの音も大き目です。
補聴器をプレゼントしようかと思うけど・・本人が気がついてからのほうがいいかな・・と思いとどまりました。
７月１５日(火)さわやかで涼しい
今日は夜九時過ぎに実家に行ったのですが・・
「オールスターはどうだった？」と聞いたら「今日はないよ、明日からよ」と言う返事・・
私もよく知らなかったので・・そうかと思って聞いてたのですが・・帰りの車のラジオでオールスターの結果を言ってました。母はがっかりするだろうな・・と思ったけど、まあ明日も試合あるからいいか・・
７月１７日(木)
昨日もゲストが来て練習にあけくれ夜に実家に行きました。
で、「やっぱり昨日はオールスターあったねぇ」と言ったら・・「ええ？　なかったよー。ニュースでもやらなかったし、松井もイチローもでなかった」と・・「えー　お母さんが言ってたのはメジャーリーグのことなん？」
いつの間にメジャーリーグまで見るようになったんだろ・・巨人にはあんまり興味なくてもメジャーリーグには興味あるんだろうか・・・不思議な気がしました。
今日は昼はピアノの練習、夕方から夜１０時まで本業のレッスンで実家には行けない日です。
かわりにダンナが母のところに謡曲を習いに行っています。
母に言わせると、謡曲はなかなか上達しないらしいけど、日頃出来ない力仕事をやってくれるし、らんちゃんを散歩に連れてってくれるし・・なにより話し好きなので、毎週木曜日が楽しみみたいです。
だんだん私の影がうすくなりそう・・・
７月１９日(土)
豪雨・・実家はもう築４０年以上なので・・チト心配しながら実家に行ったのですが・・トイを修理したばっかりだったし、家には被害はなかったようです。
ただ、雷がすごくて夜中じゅうらんちゃんが怖がってほえまくるし、母のところに来ては手でチョンチョンと起すらしく・・全然眠れなかった・・と、ぼやいてました。
で、雷がおさまった朝方から昼にかけてトロトロと眠ったそーです。
昼に電話で目が覚めたら、岡山の弟からで、「今、ニュースで見たけどすごい雨だったんですね・・お姉さんの所は大丈夫？」という内容で、、その時はじめて博多駅の浸水とか・・知ったのだそうです。
だから・・「雨はたいしたことなかった」と答えたらしい・・
で、改めてテレビ見て・・びっくりしたらしい・・・
雷ばっかり気になって、雨音には無頓着だったのは、やっぱりらんちゃんがいるせいかも・・母らしいなと思いました
7月20日(日)
母は今日は御機嫌でした。
なぜかと言うと、魁皇？が優勝したからです。福岡県出身力士で、いつも応援してるのですが、ここぞという時ではなく・・今日は大丈夫だろうと思うときにコロッと負けてしまうので、いつもハラハラするそうです。
最近ではサッカーも見るし、昨日は水泳も見てました。母がこんなにスポーツ好きだとは知りませんでした。
７月２２日(火)晴れ後どしゃぶり後晴れ
朝、９時前から屋根の工事でさすがの私も振動で寝てられなかった。
今日は、母を銀行と郵便局に連れて行く約束をしていたので、一時すぎに家を出ました。
お天気もいいし、母にとってはたまにしかない散歩のチャンスだし、と思って行ったのはいいのですが、用事が済んで遅いお昼ご飯を食べに母と一緒にレストランに入ったら・・突然雨が・・母は「お店に着いててよかったねー」と話してたのですが・・私は自分の家の屋根工事がどうなってるか心配で気が気ではありません。母に事情を話して、大急ぎで食事をして、家に帰ったのですが・・
屋根には職人さんが雨の中いっぱいのぼってて青いシートを広げてました。
あわてて家に入って天井を見てまわったけど・・雨漏りはしてませんでした。一安心です。
７月２３日(水)雨後晴れ
今日も朝からすごい雨・・で、今日は工事はないのかな・・と思ってたら　１１時頃から天井で大きな音が・・
昨日のは応急処置だからこんなすごい雨がふったらもたないから・・と言うことでまた大挙して大工事・・
昼からは晴れたので作業が運んだのか・・夕方７時過ぎまでがんばってました。
車庫の後ろにデカイ起重機みたいのがあって、それで屋根の部品？を吊り上げてて、とても私の車をだせる状態じゃなかったので、今日は実家には電話だけ。
母は、私の話しはそこそこに、「今日はらんちゃん美容院に行ったのよ。そしたら蚤が三匹いたって言われたの。明日蚤取りの薬つけてやってね」・・と、いうことでした。
７月２４日(木)雨時々くもり
私がまだ若い頃、結構何でも母に話していたのですが・・
ある時母に「彼が出来たんだけど・・年下なのよ。どう思う？」って話したんです。
どんな返事が返ってきたと思います？　正直、私はびっくりしたことを覚えてます。
「ジャリの中にも宝石があるかもよ」・・これが母の返事だったのです。あの時代に・・です。
この彼とはその後別れてしまったのですが・・・
母は「あわてて結婚することはないよ。やりたいことがあって食べていけるなら結婚なんかしなくていいよ」とも言いました。
「あなたは良い時代に生まれたんだから、幸せよ。お母さんの時代は戦争と封建社会で、女性は何もできなかったんだから・・」
まだその頃もじゅうぶん封建社会のなごりある時代だったのですが・・母は女性でも自分を持って生きることを教えてくれました。
７月２７日(日)晴れ
一日総練習のため・・実家に行けませんでした。
７月３０日(水)晴れ
練習が終わって実家に行くので、、母は１０時に寝ますので、ほんの１０分ぐらいしかいないのですが・・
それでも行くとアイスクリームかお菓子が出てきます。
毎年、発表会の一ヶ月ぐらい前までは今年は見にいけないかもしれない・・と言っているのですが・・
今年も例にもれずずーっとそういい続けてきてたのですが、今日は「ヘルパーさんが連れてってくれるそうだから見にいくからね」と、すっかりその気になってました。
今年で３３回目の発表会、これまでの３２回、なんだかんだいいながらもかかさず見にきてくれました。
ありがたいものです。