それからはもう「ごはんですよー」という声が聞こえたらボク達７人家族はどこにいても、遊んでても、寝てても一斉に集合っ。みんなでがつがつ・・・それはすさまじいものです。
お腹一杯になったら、子供たちはそのえさ箱の中に入って遊んだり、スリッパをかじったり・・
そしてお腹一杯になったら、子供達はそのえさ箱の中で眠ってしまうんです。

はじめのうちは団体行動だった子供達も少し大きくなるとそれぞれのお気に入りの場所が出来て、あっちをうろうろこっちをうろうろと、単独行動するものだから、お母さんは「あーらこんなとこに・・ふんじゃうわよーっ」と、言いながらいつも足元を気をつけながら歩かなければなりませんでした・・でも、子供達はじゃれたり眠ったりしながら、日に日に大きく、そして可愛く成長していきました。さすがにボクとヒメちゃんの子供・・とびきりの美男びじょです。

ある日、お母さんがなんとなく寂しげにしてます・・・お客様が来るそうなんです。
お客様が来るのは大好きなお母さんなのに変だなぁ・・って思ってたら、グリーンちゃんがその人のおうちにもらわれていく・・って・・えーーーっ　家族みんな一緒に住めないの？
ボク、びっくりしたけど、考えてみたら、こんな小さな家に家族みんなは無理かもしれない・・。
それならそれで、いい人のおうちにもらわれていった方が幸せなのかもしれない・・子供達にとって・・。
我が家に五匹も子供がうまれた話しはいろんな人に伝わって、それから１０日もしないうちに、ぜーんぶ、養子に行ってしまっちゃった・・。
お母さんは養子先に一年に一度は会わせてくれることを約束してもらって泣く泣く養子を納得したみたいだよ。
一番可愛い盛りに手放すお母さんの気持ちはボクにも痛いほどわかった・・だってボクだってずっごい寂しかったもん。
ヒメちゃんは「大丈夫っ。私の子供なんだもん、どの子も、きっと幸せになれるよ」って・・。

こうして、また、お父さんお母さん、ヒメちゃん、ボク、の生活に戻った。
しっかり母親をしてたヒメちゃんはまた元のわがままなお姫様に戻ったし・・。
里子にだした子供達が時々里帰りしても、もうヒメちゃんにとってはライバルって感じで、お母さんがその子達を膝に乗っけようとすると、ボクに怒る時よりすごい勢いで怒るんだ。
「ちょっとだけならいいでしょ？」とヒメちゃんに言いながらお母さんは立ってその子を抱いてたよ。さすがのヒメちゃんも立ったお母さんの腕まではジャンプ出来ないからね。
こうして平和ながらも毎日いろんな事件をおこしながら、月日が立ち、、
ヒメちゃんはなんと五回もお産をして、全部で２５匹のあかちゃんを産んだのです。
たいしたもんだ・・・ボクはホーント尊敬してるよ。
お母さんは「私のぶんもたくさん産んでくれたのね」と、喜んでるけど・・全部一緒に住むわけにはいかないから、みんなお母さんが一生懸命親探しして・・可愛がってもらえるところにもらわれていったんだけど・・。
五回目のお産のとき「これ以上ヒメちゃんにあかちゃんが出来たら、ヒメちゃんの寿命を縮めちゃうかもしれないわね」と、いうことになって、、「ヒメちゃんかクチャに手術してもらわなくちゃね」って・・。
えーっ手術？痛そうだなぁぁぁ・・でも、ヒメちゃんはたくさん赤ちゃん産んでしんどい目にあってるんだから・・
よーーしっ　ボクが手術しよう・・と、ボクは決心した。
そしてお母さんは、「もう赤ちゃんは産まれないんだから」って、五回目のお産の時、女の子を一匹残して「元気子ちゃん」と命名して、一緒に暮らすようになったんだ。
名前の通り、元気ちゃんはスクスク育った・・おまけにそれはそれは可愛かったんだよ。
なんたってボクとヒメちゃんの子供だもんねっ。
五人家族になったボクたちの生活は一段と賑やかで楽しいものになったよ。
たとえば・・
毎週日曜日には、お父さんがボク達家族を連れて散歩にいってくれた・・うれしかったなー。
ヒメちゃんは「私はうーんと走りたいんだから、邪魔しないでよ」元気ちゃんは「ねーあっちにおもしろそうなものがあるよー行こうよー」ボクはと言えば「そんなにあわてないでゆっくりお散歩しょうよ」ってな感じで、お父さんはみんなの要求に答えるのに四苦八苦してたみたいだよ。でも、雨の日以外は、どんな用事があってもその前に必ずちゃんと散歩に連れて行ってくれるお父さん・・だーーい好きっ。

それから、事件と言えば、、ある日またヒメちゃんが行方不明になったんだよ
って言うか・・お母さんは本を読んでて気がつかなかったし、ボクと元気ちゃんは、一緒に遊んでたから・・誰も気がついていなかったんだけど・・ふと、元気ちゃんが【お母さんは？」って聞いて、あれ？そういえばどこに行ったんだろ・・姿みないなぁ・・ってことで、ボクと元気ちゃんで探すことにしたんだ・・ボクは前例もあるし・・また押入れかな？って思って家中の押入れを探したけど・・見当たらない・・あれ？これはおかしいぞ・・お母さんに知らせた方がいいかも・・って思ってたら元気ちゃんが「パパー大変よーーっ」って走ってきたんだ・・「ママがお風呂の中で泳いでるー」って
えーーーっ　ヒメちゃんは泳いだことないのに・・今日はそんなに暑くもないし・・
ボクは驚きながらも、どれどれ・・と、お風呂場に行ってみたら・・なんとっ！！
ヒメちゃんが泣きそうな顔してお水の中から顔をだしているんだよ・・「どうしたのー？何してるのー？」って聞いたら、ヒメちゃんは、蚊の鳴くような声で「お風呂にはフタがしてあると思って飛び乗ろうと思ったら・・フタがなくて落ちちゃったのよー。もう立って首出してるのに疲れちゃったよー　助けてよ」って・・
びっくり仰天・・・
これはなんとかしないとヒメちゃん・・溺れて死んじゃうかも・・早くお母さんに知らせなきゃ・・お母さんの所に走っていったら、お母さんは「あ・・ちょっとお買い物に行ってくるから、仲良くお留守番しててね」って・・階段を下りて行ってしまったんだよ。
わーーーーおっ・・一大事っ。
元気ちゃーん、どうしよう・・二人でなんとか助けなきゃ」」どーしたらいいんだろ・・大声で吠えてみるか・・でも、家には誰もいないんだし・・ボクが湯船に入って押し上げようか・・でも、そしたらボクが出られなくなるし・・そーだっ、お風呂の栓を抜けばいいんだっ・・でもどーやって？
困った、困ったなぁぁぁと、元気ちゃんと大騒ぎしてたら階段上がってくる音がして「忘れ物忘れ物・・お財布忘れちゃったぁ」ってお母さんが戻ってきたのだっ・・おおお・・神の助け・・ポクと元気ちゃんは気も狂わんばかりにお母さんに駆け寄って「ヒメちゃんが大変なんだよー」と知らせたんだ・・。
と、「あれ？ヒメちゃんのお出迎えは？」って、やーーっと　気がついてくれたんだよ、お母さん。
んで、ボク達の様子にも気がついてくれて、ボクの後についてきてお風呂場に来たお母さんは目を丸くして「キャーッ・・ヒメちゃんっ」と、叫びながらもヒメちゃんを湯船から抱き上げてくれたんだ・・
お母さんははお買い物も忘れてバスタオルでヒメちゃんを拭きながら「もうヒメちゃんはドジなんだからぁぁ・・一体誰に似たんでしょうねぇぇ」さすがのヒメちゃんもこのときはくたびれたとみえて何も言わなかったんで、ボクがそっと言ってあけだ・・「それはお母さんだよ」って・・でも、何事もなかったから言えたんだよね・・
よかったよかった。

そうそう、それからこんなこともあったよ。
ある日お母さんがお出かけで、ヒメちゃんと元気ちゃんとボクと三人で遊びまわってたんだけど・・元気ちゃんが遊びに夢中になっちゃって、思わずじゅうたんにオシッコしちゃったんだ・・「あららぁぁお母さんが帰ってきたら叱られるねぇぇどうしましょ」ってヒメちゃんが心配顔。ボクも元気ちゃんが叱られてるの見たくないし・・。
んで、三人で相談したんだ。どうしたら叱られずにすむか・・そいでさ、名案が浮かんだんだよ・・我ながらいい考えだと思ったよ。どーしたと思う？
お母さんがご機嫌で外出から帰ってきて・・ボク達もいつもどおりの大歓迎をして・・なにげないそぶりしてたんだけど・・やっぱり「あーーっ　これ誰かのオシッコじゃないのー？」って甲高い声がしたっ。
ボク達は目配せして、三人一緒にお母さんの側に駆け寄って、一斉にごめんなさいをしたんだよ。
そしたら「えーっ　三人共ごめんなさいをしたんじゃ誰がやったのかわかんないじゃないのー」ってお母さんは目を白黒･･【困ったわねーやってない子に怒るわけにもいかないし・・」と、ブツブツいいながら拭いているんだよ・・
ボク達は目配せしながら、ごめんなさいをしたままお母さんのお掃除が終わるのを待ってたら許してくれたんだよ。
お母さん・・やっぱり甘いし、やさしいお母さんっ。
作戦大成功・・ってことがあって・・それからはチョクチョクこの手を使ったよ。

ある日曜の朝、お父さんが起きたのでボク達も大急ぎでお布団から飛び出した。だって日曜日に晴れてたら、お父さんは必ず散歩に連れてってくれるからね。
案の定、お父さんは引き出しからリードを出していた。「わーーいっ　お散歩だぁぁ」
もうボクもヒメちゃんも元気ちゃんもすっかり興奮状態。
まだベットで眠りこけってるお母さんに報告しなきゃ・・。
お父さんは、リードを持って「ほら、誰からリードをつける？」と、待ち構えてるけど・・それより何よりまずはお母さんへの報告が大事なのだ。
まずはヒメちゃんが、まだ眠っているお母さんの顔をペロペロってなめて「お母さんお散歩に言ってくるからねっ」
次にボクが「お父さんがお散歩に連れてってくれるんだよー」ってお母さんの肩をチョイョイと叩くんだ。そして最後が元気ちゃんの番。すっごい勢いで走って行ってお母さんのお腹にジャンプして乗っかり、お母さんの顔中を手でひっかいたりなめたり・・大騒ぎ・・。
こんなひと騒動があってから・・お父さんにリードをつけてもらって散歩に行くんだけど・・その日は、元気ちゃんが、どーいうわけかものすごい喜びようで、いつもは一度しかお母さんに報告に行かないのに、二度も三度も行くんだ・・。
さすがのお母さんも目を覚まして「今日の元気ちゃんはどーしたのよー・・すっかり目が覚めちゃったじゃないのー」って起き上がってあきれてた。